厚木市立病院

血管専門外来(血管外科)

 血管疾患について

 我が国では、高齢者の比率の増加とともに、血管病を罹患する方が増えております。当院では、2015年4月より日本有数の施設である慈恵医大血管外科にて最先端の血管外科診療に従事してきた血管外科専門の常勤医が赴任し、血管外科を開設いたしました。当院で、2015年3月に完成した最新式のフラットパネルを備えたハイブリッド手術室は、計画段階から血管外科が行うステントグラフト手術など血管造影を活用した手術を想定して、最適化されて設計されており、先進的な血管外科手術が可能であります。カテーテルを用いた低侵襲な血管内治療(バルーン拡張やステント治療)やX線透視を併用した外科手術が可能であります。血管外科は文字通り、血管を扱う手術を行いますが、部位としては、多岐にわたり、頭蓋内の脳動脈、心臓の血管(冠動脈)、上行弓部大動脈以外の全身の末梢血管を扱います。また、手術法も、バイパスや内膜剥離などの手術、バルーン、ステントなどを使用した血管内治療、それらを組み合わせたハイブリッド治療なども行います。各治療のメリットデメリットを考慮し、患者さんへ最適な治療を提供いたします。

血管外科の病気について

 血管外科で治療対象となる疾患は、腹部大動脈瘤(破裂のリスク)、閉塞性動脈硬化症(間欠性跛行、重症下肢虚血)、頸動脈狭窄症(脳梗塞の原因)、腎動脈狭窄症(腎血管性高血圧の原因)、内臓動脈瘤(破裂のリスク)、急性動脈閉塞症(下肢や内臓の虚血症状)、下肢静脈瘤(静脈うっ帯症状、皮膚炎、静脈性潰瘍)、慢性腎不全の透析用内シャント(シャント造設/バルーン拡張/血栓除去)、胸郭出口症候群などに対する診療を行っています。

腹部大動脈瘤

心臓から送り出された血液は大動脈という太い血管を通って、全身に送り出されます。その大動脈の壁が膨らんできてしまう病気を大動脈瘤と呼びます。その中でも腹部を通る大動脈(腹部大動脈)が瘤状に膨らんだものが腹部大動脈瘤で、動脈瘤の中で最も頻度の多いものです。

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(図1 腹部大動脈瘤のCT画像)

動脈瘤が大きくなると破裂して、体の中で出血して、ショックから死に至ります。

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(図2)破裂した腹部大動脈瘤

破裂した場合の救命率は低く、無症状の状態での治療が重要になります。一般的には破裂するまでは無症状なので、本人もわからない場合が多いのですが、近年の画像診断の進歩により、他の疾患の精査でたまたま見つかったり、健康診断で発見されたりすることが多くなっています。性別では男性に多く、また喫煙者で多いことがわかっています。
 破裂のリスクは動脈瘤の径が大きくなるほど、拡大速度が速い程、高くなります。また瘤の形状が突出した形(嚢状瘤)ほど、性別では女性の方が高くなります。手術の適応は、瘤径と拡大速度で規定されており、一般的には瘤径5cm、また拡大速度で、半年で5mm以上拡大してくるものが、手術適応となります。まだ径の小さい段階では、半年や1年毎にCTで大きさの変化を経過観察することもありますが、嚢状瘤など大きさにかかわらず手術がすすめられる場合もありますので、まずはご相談ください。

検査
 CT検査(造影剤使用)など

 治療
 
治療の目的は、破裂を防ぐことになります。従来、開腹して腹部大動脈瘤を人工血管で置換する人工血管置換術が標準的な手術として定着しておりました(図3-①、②)。長期成績の安定した標準的な手術ですが、傷が大きく、体への負担がやや大きいため、比較的若年で、重篤な併存疾患のない方が適応となります。
 
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(図3-①) 腹部大動脈瘤 人工血管置換術

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(図3-②)腹部大動脈瘤人工血管置換術の手術写真

2006年よりステントグラフト内挿術が保険承認されました。ステントグラフトは金属の自己拡張型ステントに布の人工血管が縫い付けられた医療器具です(図4)。 
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(図4)腹部用のステントグラフト

血管内治療の一つで、両脚の付け根(鼠径部)に、2-3cm程の小さな切開創を入れ、脚のつけ根の血管からX線透視下に、カテーテルやワイヤーなどを使用して、大動脈瘤の内腔にステントグラフトを留置する治療法です(図5-①、②、③)。 

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(図5-①)ステントグラフトの切開創
 大動脈内にステントグラフトを内挿


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(図5-②)ステントグラフトの手順 

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(図5-③)ステントグラフト術の造影写真 

 傷が小さいため、体への負担が小さく、開腹手術のリスクの高い患者さん(高齢者、心臓や肺に病気を持っている方、何度も開腹手術をうけている方など)も治療することができます。入院期間は通常1週間程度です。当院には、慈恵医大血管外科で多数の経験を積んだステントグラフト指導医が2名在籍し、また2015年3月にオープンしたハイブリッド手術室は、高性能な血管透視装置を備えた手術室で、ステントグラフト手術に最適の設備を備えています。現在、日本では日本ステントグラフト実施管理委員会が、一定の基準(経験ある指導医の常勤や適切な設備など)をクリアした施設に対して、施設認定を行っており、当院は正規施設認定を取得しております。また、破裂してしまった腹部大動脈瘤の患者さんにも緊急で対応できるように、通常は症例ごとにメーカーに発注して取り寄せる医療機材を、一定数、常備するようにしております。腹部大動脈瘤を患う患者さんの状態を考慮し、ベストの治療を提供いたします。

 

血管内治療

 腹部ステントグラフト内挿術

手術治療

 人工血管置換術

 

閉塞性動脈硬化症(慢性動脈閉塞症)

動脈硬化により動脈が狭窄や閉塞する病気が閉塞性動脈硬化症です。この病気により下肢への血流が少なくなると、一定の距離を歩いたときに脚の筋肉が痛くなる症状(間欠性跛行)がみられます(図6)。
  

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(図6) 間欠性跛行

さらに進行すると、安静時痛といって、安静にしているときや就寝時にも痛みが出現し、足の皮膚に潰瘍や壊疽がみられ(重症下肢虚血)(図7-①、②))、それらを放置しておくと、下肢を切断することが必要になってきてしまいます。
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(図7-①)安静時痛  潰瘍壊疽 
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(図7-②)重症下肢虚血の足

このような症状は、適切な治療を受け、脚への血流を改善することによって、歩行距離を伸ばす、潰瘍を治癒させる、大切断を回避する、切断範囲を小さくするなど、症状を改善することができます。当院は下肢救済足病学会の医療連携ネットワーク病院となっています。

 

検査

 上肢下肢血圧比測定(ABI検査)

 CT検査(造影剤使用)

 血管造影検査

 超音波検査 など

治療

 治療には、保存的な治療法と手術による治療があります。(図8)
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(図8)閉塞性動脈硬化症の治療 

  保存的な治療としては、まず薬物治療として主に抗血小板剤といういわゆる血液をさらさらにする薬が使用されます。また、運動療法として、毎日30分程度やや早めに歩行する練習をすることも、痛くなるまでの距離を伸ばす効果があります。さらに、日常生活上では、喫煙されている方は禁煙することは、すべての治療をすすめる上で最も大事になります。血圧やコレステロール値、糖尿病を患っている方は、血糖値などの内科的な病気をコントロールしておくことも大事です。重症下肢虚血の状態では、感染すると一気に状態が悪くなるため、感染を予防することも重要です。下肢に傷を追わないように注意すること、深爪をしないこと、潰瘍などの病変部位を清潔に保つことなどがすすめられます。当院では糖尿病の患者さん向けのフットケアも積極的に行っております。

  手術治療としては、血行を改善する手術(血行再建術)が行われます。従来は、患者さんご自身の静脈や人工血管を使用したバイパス手術(図9-①、②)や閉塞した動脈内の血栓を摘出する内膜摘除術という方法が行われてきましたが、近年、バルーンやステントといったカテーテルを使用した血管内治療(図10-①、②、③)が進歩してきており、治療することが可能となってきました。

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(図9-①)バイパス術
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(図9-②)バイパス術の造影写真 
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(図10-①)バルーン拡張術(PTA) ステント術 

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(図10-②)腸骨動脈ステント術の造影写真 
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(図10-③) 下腿動脈バルーン拡張術(PTA)の造影写真 

 血管内治療は、局所麻酔で行い、皮膚を切開せずに治療が可能で、患者さんへの負担が非常に小さい治療法です。当院では、従来は血管内治療が難しかった病変(長い閉塞病変や下腿の細い動脈の病変など)に対しても、適応があれば、種々の医療技術を駆使して治療を行っています。また、手術と血管内治療を組み合わせて治療することもあります(ハイブリッド治療)。 
 血管外科医が常勤されていない病院では、近年は閉塞性動脈硬化症の治療を他科でカテーテルのみで治療されることもあります。血管内治療は侵襲の少ない治療ではありますが、すべての病変に向いているわけではなく、無理にカテーテルのみで治療をすると、治療効果がないばかりか病態が悪化することもあります。従来より、血管外科医は閉塞性動脈硬化症の治療を専門としてきており、病態、自然歴をよく理解しており、また、保存治療、血管内治療、手術の各治療のメリットデメリットをよく把握しております。また、重症下肢虚血の患者さんでは、治療後の傷の管理が極めて重要であり、創傷治癒についての深い知識も必要です。これらを総合的に評価できるのは血管外科医による治療の強みです。血行再建の手技のみならず、創傷や全身管理を含めてトータルでベストの治療を提供いたします。 

 

保存的治療

 薬物治療
 運動療法
 禁煙
 内科的治療

手術治療

 バイパス手術
 内膜摘除術

血管内治療

 バルーン拡張
 ステント留置

ハイブリッド治療

 手術治療と血管内治療の組み合わせ

 

頸動脈狭窄症

動脈硬化は通常全身の動脈に進行してきますが、頸動脈という頭へ血液を送る通路となっている首の血管が狭くなってきてしまうのが、頸動脈狭窄症です。頸動脈狭窄症は、痛みなどの自覚症状はありませんが、脳梗塞の原因の一つとなる重要な病気であります。頸動脈狭窄症は、通常、粥状硬化といって、コレステロールや脂質あるいは血液の成分などのかたまりでできているドロドロの物質の表面に薄い線維の皮膜で覆われている粥腫(プラーク)という病変でできています。それらが破綻すると、それらの一部が脳へ飛び(塞栓)、脳の血管を閉塞して脳梗塞を引き起こします。狭窄の程度が一定の割合を超えると、脳梗塞の発症率が上がるため、治療の適応となります。治療の目的としては、プラークを取り除いて、こうした脳梗塞の発症を防ぐことにあります。

診断
 CT検査(造影剤使用)
 MRI検査
 超音波検査
 血管造影検査 など

 治療
 頸動脈狭窄の治療は、頸動脈を切開して、プラークを直接取り除く頸動脈内膜剥離術とカテーテルを使用してプラークの部位にステントを留置する頸動脈ステント術があります。
 頸動脈内膜剥離術(CEA)は頸動脈狭窄の標準的な治療です。頸動脈は首で皮膚から近い部位にあり、手術で直接到達することが容易な血管であります。通常では、首に大きな皮膚切開をおいて治療されることが多いですが、当院では約3cm程の小さな皮膚切開にて手術を行っており、傷の痛みを少なくして、患者さんへの負担を軽減して、手術を行っています(図11-①、②、③)。

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(図11-①)頸動脈内膜剥離術の手術創

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(図11-②)頸動脈内膜剥離術(当科で施行している慈恵医大Eversion式)
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(図11-③)頸動脈内膜剥離術造影写真

頸動脈ステント術は、血管内治療の一つであり、傷をつけずに、局所麻酔で脚の付け根の血管からカテーテルを使用して、ステントを病変部位に留置する治療法です(図12-①)。 
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(図12-①)頸動脈ステント術 

  ステント留置前に、脳への塞栓を予防するために、塞栓予防フィルターという器具を病変部位の先の方に一時的に留置し、その後、ステントを留置します(図12-②、③)  

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(図12-②)塞栓予防フィルター 頸動脈ステント
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(図12-③)頸動脈ステント術 造影写真

 フィルターで捕らえられた塞栓物質は回収されます。局所麻酔で、皮膚を切らずにすむメリットはありますが、治療による脳梗塞の発生率が頸動脈内膜剥離術よりやや高いことが、報告されています。
 双方の治療法のメリットデメリットを考慮し、患者さんの状態に合わせた治療法を行っています。

 

手術治療

 頸動脈内膜剥離術

血管内治療

 頸動脈ステント術

 

下肢静脈瘤

下肢にみみず腫れのような血管が表面に浮いてみえているものが下肢静脈瘤です(図13)。性別では女性に多いですが、男性でも罹患します。
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(図13)下肢静脈瘤

  多くの方が患っている病気ですが、生命にかかわることが少なく、放置されていることが多い病気です。無症状の場合もありますが、症状としては、脚がだるい、夕方むくんでくる、皮膚がかゆい、夜に脚がつる(こむら返り)などの症状が起きます。
ときどき、静脈瘤内に血栓を作って、局所が赤く腫れて、痛みを伴う場合もあります(血栓性静脈炎)。脚の静脈には、静脈弁という逆流を防止する弁が内部に所々ついており、静脈内の血液を心臓に返すように働いています。静脈瘤の患者さんの場合、その静脈弁が壊れており(弁不全)、静脈血が脚の先に向かって逆流してしまうため、血液が静脈内に滞ってしまい(静脈うっ滞)、だるさやむくみなどの静脈瘤特有の症状の原因となります(図14)。

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(図14)下肢静脈瘤の血行動態

さらに進行してうっ滞症状が強くなると、皮膚が黒ずむ(色素沈着)、皮膚潰瘍ができて治らないなどの症状があります(図15)。この段階になると、通常の軟膏処置だけでは治癒は見込めず、ストッキングや弾性包帯による圧迫処置と静脈瘤の処置が必要になります。よって、このような病変をみた場合、まず静脈弁不全の診断をつけることが先決で、適切な治療を受け、その後の創の管理を行うことが重要になります。
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(図15)静脈うっ滞性皮膚潰瘍  治療後(静脈瘤手術後

 静脈瘤の原因となる血管は、通常は、脚の内側を通っている表在静脈の大伏在静脈またはふくらはぎの裏側を通っている表在静脈の小伏在静脈であり、それらに弁不全があること多いです。その他、穿通枝という深部静脈と表在静脈をつなぐ枝からの逆流が原因のこともあります。(図14参照)

 診断
 超音波検査
 ドップラー検査
 CT検査 など

治療
 保存的な治療としては、弾性ストッキングという通常のストッキングより圧の強いもので、圧迫する治療があります。下肢の静脈のうっ滞を改善し、症状を緩和する効果があります。しかし、静脈瘤そのものを治療することはできません。
 手術治療としては、逆流のある表在静脈をワイヤーを使って抜去するストリッピング(静脈抜去術)という標準的な治療法(図16)がありますが、傷が大きめで、侵襲がやや大きいというデメリットがありました。

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(図16)ストリッピング手術(静脈抜去術) 

 2011年よりレーザー焼灼術という低侵襲な手術が保険適用となりました。(図17-①、②)
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(図17-①)レーザー治療機器 

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(図17-②)静脈瘤レーザー焼灼術

  レーザー治療は、逆流のある表在静脈にファイバーカテーテルを通し、内腔をレーザーで焼灼し、閉塞させて、逆流を止める治療法です。ファイバーは、針で穿刺して挿入するため、脚のつけ根やファイバーの穿刺部分は皮膚切開をする必要がありません。当院では、最新式の1470nmの波長の2リングファイバーを用いたレーザー機器を使用します。従来型の980nmの波長のものより、皮下出血や疼痛などが少ないとされています。
 また、下腿の瘤が目立つ部分は、前述したスタブアバルジョン(stab avulsion)法で、数カ所の小切開で切除しております。完全に局所麻酔で施行することが可能であり、術直後より歩行可能であるため、日帰りで施行することも可能です。ただし、日帰りでご不安な患者さんもいらっしゃるため、当院では、患者さんの希望に合わせて、日帰り手術と入院手術を選択することができます。当院には、多数の症例を経験してきた静脈瘤血管内焼灼術の指導医も2名在籍しており、ベストの治療を提供いたします。(図18)
(福田)_厚木市立病院_C-新規用_ELVeSレーザー1470

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(図18)下肢静脈瘤レーザー治療の案内 

 

保存的治療

 弾性ストッキング

手術治療

 レーザー焼灼術
 ストリッピング(静脈抜去術)
 高位結紮術
 硬化療法

 

急性動脈閉塞症

 急性動脈閉塞症は、下肢や内臓などへつながる動脈が、中枢側から飛んできた血栓などのかたまり(塞栓)により急に閉塞された状態です。塞栓物質は、通常、不整脈などの原因により心臓の中にできた血栓や中枢側の動脈瘤などから飛んでくることが多いです。下肢の動脈が急に閉塞されると、下肢の冷感、しびれから放置して進行すると、知覚麻痺や運動麻痺などの症状が起こります。処置が遅れると筋肉がダメージをうけて、体に悪い影響を及ぼす代謝物質が産生されて、全身状態が悪化し、重篤な状態になります。内臓への枝が閉塞された場合は、腸がダメージをうけて、容易に壊死してしまいます。緊急で処置が必要な救急疾患の一つで、迅速な診断と治療の開始が必要です。

診断
 
血液検査
 CT検査(造影剤使用)
 超音波検査 など
治療
 
下肢の急性動脈閉塞の場合、血管を閉塞している血栓を取り出すために、血栓除去術を施行します。通常は動脈を切開し、風船がついたカテーテル(フォガティーカテーテル)を用いて、血栓を摘出します(図19)。当院ではカテーテルにガイドワイヤーが通せるスルールーメンというタイプを使用し、ハイブリッド手術室での造影下に、ガイドワイヤーを用いて、細い血管や曲がった血管にカテーテルを導いて、血栓除去を施行しています。また、造影にて残存血栓なく、血流の再開を確認します。(図20)  

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(図19)フォガティーカテーテル 

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(図20)急性動脈閉塞 血栓除去術 

血流は再開した後は、血流が途絶えていた時間に応じて、筋肉が腫脹しますが、下腿の場合、しっかりした筋膜で覆われた狭い空間に筋肉が存在しているため、容易に内圧が上がり、血流が障害されてしまいます。この状態をコンパートメント症候群といいますが、筋膜を切開して、内圧を下げる処置が必要になります。また、腎臓の機能が低下したり、呼吸状態が悪くなったり、全身に影響するため、特に発症から時間が経っている場合は、厳重な全身管理が必要です。 
 内臓の急性動脈閉塞の場合、腸管は虚血に弱い臓器であるため、緊急で開腹手術が必要になります。血流を再開させる処置の他、腸切除、場合により人工肛門などの処置が必要になります。厳重な全身管理が必要になります。

 

治療

 血栓除去術
 バイパス術など

 

腎動脈狭窄症

  腎動脈狭窄症とは、動脈硬化や血管の炎症、動脈壁の病気などが原因となり、大動脈から腎臓につながる動脈(腎動脈)が細くなってしまう病態です。腎臓の機能を悪化させるばかりでなく、腎臓から血圧を上げるホルモンが分泌され、高血圧を発症することがあります(腎血管性高血圧)。高血圧のうち、急に発症したもの、降圧薬によるコントロールが不良なもの、若年で発症した高血圧などは、当疾患を疑い精査する必要があります。

 検査
 
血液検査
 CT検査(造影剤使用)
 MRI検査
 腹部超音波検査
 シンチグラフィー
 血管造影検査

 治療
 
薬物治療に加えて、従来は、開腹による腎動脈形成術が行われましたが、近年は、血管内治療として、バルーン拡張やステント留置が行われます(図21-①、②)。
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(図21-①)腎動脈狭窄  腎動脈ステント術後
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(図21-②)腎動脈ステント術 

 特に発症まもないものや、急激な腎機能の悪化のみられる高度狭窄に対しては、血管内治療(腎動脈バルーン拡張/ステント術)を行うことにより、腎機能を改善し、透析を回避できたり、高血圧のコントロールの改善に効果があります。

治療

 血管内治療:腎動脈バルーン拡張術、腎動脈ステント術
 手術治療:腎動脈形成術、腎動脈再建術

 

慢性腎不全に対する透析シャント手術とシャントPTA

 慢性腎不全で維持透析が必要な患者さんに対して、透析を施行するために施行される手術が、シャント手術です。通常、前腕の動脈と静脈を吻合し、つなぎ合わせます(図22)。
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(図22)内シャント手術

しかし、中には、静脈が細く、通常の前腕末梢部でシャントを造設することが困難な例や、経過中に、一度作ったシャントが閉塞してしまったり、狭窄して、十分な血流を得ることができない例、静脈高血圧により手に強いむくみが出た例、シャントにより手の虚血症状が出た例など、修復や再建が必要になることがあります。当科では、通常の初回手術の他にも、より中枢側でのシャント再建や人工血管を使用したシャント手術、閉塞したシャントに対する血栓除去術、狭窄したシャントに対するPTA(バルーン拡張術)など、血管の扱いに慣れた血管外科医師による透析シャント全般の手術を施行しています(図23)。
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(図23)シャントPTAの造影写真

 また、当院には、血液浄化センターが設置されており、腎臓内科専門医が常勤し、維持透析管理も行っていることから、入院治療も可能です。腎臓内科医と連携をとり、治療を適切にすすめてまいります。

内臓動脈瘤

   腹部大動脈からは、腹部内臓を栄養する動脈が分枝していますが、その動脈が膨らんでしまうものを内臓動脈瘤といいます。比較的まれな病気で、通常は無症状ですが、近年の画像診断の進歩により、他疾患の精査で偶然発見される機会が増えてきました。破裂する可能性があるため、治療する必要があります。内臓動脈瘤の種類としては、比較的頻度の多いものでは、脾動脈瘤、肝動脈瘤、腎動脈瘤、上腸間膜動脈瘤などがあります。

 検査 
  CT検査(造影剤使用)
  超音波検査
  血管造影検査

 治療
  開腹による瘤切除、再建や血管内治療としてコイル塞栓術などが行われます。
 まれな病気ではありますが、当院の血管外科医は多数の症例を経験しており、治療を適切に判断いたします。(図24-①、②、③)
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(図24-①)多発脾動脈瘤に対するコイル塞栓術 
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(図24-②)腎動脈瘤 腎動脈瘤コイル塞栓術
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(図24-③)腎動脈瘤術前 開腹手術後(瘤切除、再建術)

胸郭出口症候群

 胸郭出口症候群は、胸郭の上部で、腕につながる血管(動脈や静脈)や神経が、骨や筋肉などに圧迫されて、特に上肢を挙上したり、そらしたりする動作時に、上肢のしびれ、冷感、脱力、肩や首などの痛みなど、不快な症状を引き起こす疾患です。欧米では比較的メジャーな疾患ですが、日本では比較的まれな病気であるため、治療実績のある施設が少なく、多くの施設で経過観察されていたり、正しく診断されていないことも多い病気です。圧迫の原因として、斜角筋といわれる首の筋肉、頸肋や異常第一肋骨など骨の形成異常などがあります。タイプとしては、神経性、動脈性、静脈性に分けられますが、頻度としては神経性が多いといわれています。動脈性の場合は、圧迫により動脈が狭窄・閉塞し、上肢の虚血症状が出現します。静脈性の場合は、鎖骨下静脈や上腕静脈の血栓症などを併発し、上肢のむくみなどが出現します。当院では、胸郭出口症候群の治療では日本有数の診療科である当院脳神経外科と連携し、神経性、血管性の胸郭出口症候群に対する適切な診断と治療を行っていきます。(図25)
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(図25)動脈性胸郭出口症候群に対する血行再建

(鎖骨下動脈バイパス術、異常第一肋骨切除、斜角筋切離術)

 

治療:

 血管内治療:コイル塞栓術

 手術治療:瘤切除、再建術など

  ◯検査機器

 マルチスライスCT

 超音波検査

 ABI(下肢上肢血圧比)検査

 フラットパネル血管造影装置

 IVUS(血管内超音波)装置

◯血管外科外来

 外来日

 火曜日、木曜日(黒澤)

 金曜日(百川)

 急患はお電話でお問い合わせ下さい。

 

◯スタッフ詳細(医師)

 黒澤弘二 外科部長(血管外科担当)

 平成7年慈恵医大卒

 専門領域:血管外科全般、腹部大動脈瘤、閉塞性動脈硬化症、頸動脈狭窄症、下肢静脈瘤など

 専門医/認定医等

 日本外科学会認定医 専門医

 心臓血管外科専門医

 日本脈管学会認定脈管専門医

 日本血管外科学会認定血管内治療医

 腹部ステントグラフト実施医 指導医

 胸部ステントグラフト実施医 指導医

 下肢静脈瘤血管内焼灼術実施医 指導医

 ECFMG(米国医師国家試験)Certificate

 

 百川文健 医長

 平成18年弘前大学医学部卒

 専門領域:血管外科全般、腹部大動脈瘤、閉塞性動脈硬化症、頸動脈狭窄症、下肢静脈瘤など

 専門医/認定医等

 日本外科学会専門医

 腹部ステントグラフト実施医、指導医

 日本脈管学会認定脈管専門医

 下肢静脈瘤血管内焼灼術実施医

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