腹部大動脈瘤外来
腹部大動脈瘤外来
当院は、慈恵医大血管外科グループであり、多数の手術経験のある腹部ステントグラフトの指導医が在籍し、高性能なフラットパネルを備えたハイブリッド手術室を使用し、腹部大動脈瘤に対する低侵襲なカテーテル治療であるステントグラフト内挿術を行っております。
腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術は、開腹する必要がなく、鼠径部の2カ所の小切開からカテーテルを用いて、ステントグラフトと呼ばれる金属のステントと人工血管が一体となったデバイスを大動脈の内腔に挿入する治療法で、患者さんへの負担の大変小さい治療法です。当院ではさらに経皮穿刺法と呼ばれる皮膚の穿刺によるステントグラフトを第一選択として行っており、小切開よりもさらに小さな刺し傷のみで、負担がさらに少ない治療を提供しています。当院は日本ステントグラフト実施基準管理委員会の定める厳しい基準を満たし、認定実施施設となっております。解剖学的に適さない場合などは、人工血管置換術を行っております。
腹部大動脈瘤外来は、血管外科外来にて行っております。
※ 予約は、かかりつけ医やご自宅近くにあるクリニックなどから紹介された患者さんに限定させていただきます。
・外来日
木曜日午前 黒澤
金曜日午後 山田
腹部大動脈瘤とは
心臓から送り出された血液は大動脈という太い血管を通って、全身に送り出されます。その大動脈の壁が膨らんできてしまう病気を大動脈瘤と呼びます。その中でも腹部を通る大動脈(腹部大動脈)が瘤状に膨らんだものが腹部大動脈瘤で、動脈瘤の中で最も頻度の多いものです。(図1)
(図1)腹部大動脈瘤のCT画像
動脈瘤が大きくなると破裂して、体の中で出血して、ショックから死に至ります。(図2)
(図2)破裂した腹部大動脈瘤
破裂した場合の救命率は低く、無症状の状態での治療が重要になります。一般的には破裂するまでは無症状なので、本人もわからない場合が多いのですが、近年の画像診断の進歩により、他の疾患の精査でたまたま見つかったり、健康診断で発見されたりすることが多くなっています。性別では男性に多く、また喫煙者で多いことがわかっています。
破裂のリスクは動脈瘤の径が大きくなるほど、拡大速度が速い程、高くなります。また瘤の形状が突出した形(嚢状瘤)ほど、性別では女性の方が高くなります。手術の適応は、瘤径と拡大速度で規定されており、一般的には瘤径5cm、また拡大速度で、半年で5mm以上拡大してくるものが、手術適応となります。まだ径の小さい段階では、半年や1年毎にCTで大きさの変化を経過観察することもありますが、嚢状瘤など大きさにかかわらず手術がすすめられる場合もありますので、まずはご相談ください。
検査:
CT検査(造影剤使用)など
治療:
治療の目的は、破裂を防ぐことになります。従来、開腹して腹部大動脈瘤を人工血管で置換する人工血管置換術が標準的な手術として定着しておりました(図3-①、②)。長期成績の安定した標準的な手術ですが、傷が大きく、体への負担がやや大きいため、比較的若年で、重篤な併存疾患のない方が適応となります。
(図3-①)腹部大動脈瘤 人工血管置換術
(図3-②)腹部大動脈瘤人工血管置換術の手術写真
2006年よりステントグラフト内挿術が保険承認されました。ステントグラフトは金属の自己拡張型ステントに布の人工血管が縫い付けられた医療器具です(図4)。
(図4)腹部用のステントグラフト
血管内治療の一つで、両脚の付け根(鼠径部)に、2-3cm程の小さな切開創を入れ、脚のつけ根の血管からX線透視下に、カテーテルやワイヤーなどを使用して、大動脈瘤の内腔にステントグラフトを留置する治療法です(図5-①、②、③)。
(図5-①)ステントグラフトの切開創
大動脈内にステントグラフトを内挿
(図5-②)ステントグラフトの手順
(図5-③)ステントグラフト術の造影写真
傷が小さいため、体への負担が小さく、開腹手術のリスクの高い患者さん(高齢者、心臓や肺に病気を持っている方、何度も開腹手術をうけている方など)も治療することができます。入院期間は通常4日から7日程度です。
当院では、破裂してしまった腹部大動脈瘤の患者さんにも緊急で対応できるように、通常は症例ごとにメーカーに発注して取り寄せる医療機材を、一定数、常備するようにしております。腹部大動脈瘤を患う患者さんの状態を考慮し、ベストの治療を提供いたします。
スタッフ詳細
●血管外科
黒澤弘二 外科部長(血管外科担当)
平成7年慈恵医大卒
日本外科学会専門医・指導医
心臓血管外科専門医 修練指導医
日本脈管学会認定脈管専門医・指導医
日本フットケア足病学会認定師
フットケア指導士
日本血管外科学会認定血管内治療医
腹部ステントグラフト実施医 指導医
胸部ステントグラフト実施医 指導医
下肢静脈瘤血管内焼灼術実施医 指導医
ECFMG(米国医師国家試験)Certificate
山田雄太 医員
平成29年金沢大学医学部卒